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業界レポートトップイメージ ノルウェーへ ドイツへ フィンランドへ

日本新聞製作技術懇話会が主催する第40回CONPT‐TOUR2015欧州新聞製作事情視察団に参加した。今回のコンプト参加者は総勢33人(新聞社13社 13人、会員社14社17人、新聞協会1人、事務局2人)。2015年10月4日から10月11日の8日間、フィンランド、ドイツ、ノルウェーの3カ国を視察する日程だった。成田空港8時半集合。団結式を行い、大谷団長(東洋インキ)の心強い挨拶のあと、ヘルシンキに向かい出発した。

11時発FINNAIR074便でヘルシンキに向け離陸した。搭乗者の1人が急病になり離陸が1時間送れるトラブルが発生したが、ツアー期間は大きな事故もなく日程が終了したのは幸いであった。

フィンランド編

アルマメディア本社視察

本社はヘルシンキ市内にあり、デジタルサービスと新聞発行が中心のメディア企業だ。1864年創刊で従業員数は1830人。2014年の売上高は2.95億ユーロ(413億円)にのぼる。

同社には4つの事業部門があり、新聞事業、ビジネス情報提供事業、デジタル事業、その他の事業を手がけている。新聞事業では、朝夕刊をはじめ、5つの地域紙、29の地方都市紙を展開。朝刊は2013年国内第2位、約11.4万部を発行。オンライン版は2010年、26万/週アクセスを記録している。ビジネス情報提供では、マーケティング・ソリューションだけではなく、ビジネス・財務分析のサービス提供も行なっている。

また、2014年には、富士通サービスにデータセンターの集中管理、運営、クラウド対応を依頼し、作業の効率化とコスト削減を大幅に推進した。

今後はデジタルビジネスの取り組みを盛んにすることや、若者の読者囲い込み作戦としてコンテンツ開発に力を注ぐと語っていた。

アルマ メディアTampere工場視察

アルマ メディアの印刷工場は国内に3カ所あり、今回訪問したのは、タンペレ工場だ。デザイン的にも色彩的にも洗練された工場で近代的な設備が目立った。

同工場は首都ヘルシンキに一番近く、一昨年建設されたばかりの新鋭工場である。7000万ユーロ(98億円)を投資して2013年に完成。同年の1月から稼働し、週320万部の新聞が印刷され、160万部が定期購読者に発送されている。環境をとても配慮した工場で、徹底管理のもと廃棄物をなくすよう努めていた。

同工場の印刷関連の従業員数は100人程度。40種類ほどの媒体を印刷しており、朝刊帯は6種類の媒体を印刷している。ブロード紙やタブロイド紙、その他にミニ(タブロイド紙の半分のサイズ)と呼ばれる新聞もあった。

セクション印刷が大半を占め、その処理を可能とするだけのインサート設備を備えていた。今年に入ってからインサート業務が増えており、多部数、小部数にも効率的に対応しているとのことだ。

レイアウト 1階:紙庫、輪転機給紙部、キャリア、梱包ライン、トラックヤード
2階:CTP、新聞輪転機

生産設備

(1)製版 ・プリプレス

  1. インキ削減装置:Agfa Optinku
  2. CTP:Agfa Advantage N-DL-XXT ×2台
  3. プレート:Agfa N94VCF フォトポリ、現像レスは574 × 394mm、耐刷は20万/imp、1パレット/1250枚、年間使用量は72万枚
  4. 処理ベンダー:Haase(処理部)Nela(ベンダー部)
  5. 刷版仕分け装置

(2)印刷

  1. 輪転機:Manroland Colorman Autoprinnt 印刷速度:9万部 /h、8TS(タワーサテライト)+3F(折機)+8R(給紙)、刷版自動装着ロボットあり。
  2. 紙庫:縦積みで2週間分を収納、巻き幅はA、C、D巻の3種類で、3社の用紙メーカーを使用。

(3)発送

  1. キャリア・インサータ:ferag。先刷りした新聞をロールドラムに取り置きインサートしていく。最大200頁まで対応可能で、トラックヤードにはスパイラル形状シューターで搬送する。
  2. シール貼り付け装置:クーポン券などを紙面に貼る。

ヘルシンギン サノマット本社視察

ヘルシンギン サノマットは、サノマグループ傘下のサノマメディア・フィンランド社が首都で発行する日刊紙で、日本ではヘルシンキ新聞とも呼ばれている。創刊は1889年。フィンランドにおける最大の契約制新聞社だ。平日の発行部数は28万5000部で、日曜日版は32万部にのぼる。

新聞発行部数が減少していく中、デジタルに向けた投資にも余念がない。テレビ界から女性編集長をヘッドハンティングするなどし、子供、生活、女性に関する情報を動画コンテンツとして提供するサービスを開始している。

特徴

  1. ヘルシンキの98%のシェアを占めているメディア企業。
  2. 売上は約6.3億ユーロ(うちデジタルは850万ユーロ)。
  3. 発行媒体は日刊紙(Helsingins Sanomat)、週刊紙(Nyt Weekly)、
    月刊紙(Kuukausiliiite)、Web(HS.fi/HSTV)

紙とデジタルとの融合

コミュニケーションを重視し、作業フロアを統合させ、紙面製作もデジタルも同一システムで実現していた。

ビデオコンテンツの強化

テレビ局出身者を編集長に抜擢し、取材時に動画を撮ることでコンテンツの増加を図っている。また、最新の情報を提供するために、テレビスタジオも設置。自分の業務以外には関心を持たない者が多い職場であったが、意識改革を行い、現在では多くの人材がオールマイティーに業務をこなしている。

ドイツ編

フィンランドでの視察を終え、10月6日の早朝、ヘルシンキ空港からドイツのハンブルグ空港へ旅立った。モーニングコールは午前4時、ホテルロビー集合は5時20分とハードな日程ではあったが、視察団メンバーは誰一人遅れることなく空港へ。フィンランド航空AY853便でハンブルグ空港へ到着した。ハンブルグ到着後、簡単な市内観光を行い、目的地である、World Publishing Expo(WPE)会場に到着した。

WANーIFRA(世界新聞・ニュース発行者協会)主催のWPE展は、今年で第45回となり、ドイツのハンブルグ・メッセで10月5日から7日までの3日間開催された。WANーIFRAからの発表によると、約79カ国、7000が来場。会場は2つのホールで展示があったが、メッセ入り口前は閑散とし、ほとんど人がいない状態であった。会場には上流部門と下流部門の展示がある他、国際ニュースサミットなども同時に開催されていた。

展示会の見学前にWANーIFRAのワーフェル氏の特別講演に参加した。ワーフェル氏は、「世界の27億人が紙の新聞を購読している。今後も紙の新聞離れは深刻化を増す可能性はあるものの、下げ止まった。視察した新聞社の紙媒体は縮小していく」と語った。新聞印刷に携わる者としては受け入れ難い話ではあるものの、電子版が伸びているのもまた事実。参加したメンバー全員が考えさせられた講演であった。

WPE2015見学

WPE2015は、日本のJANPS、IGAS同様の傾向で、実機などはほとんど無く、あるのはモニター、パソコン、タブレット端末がブースに設置してあるだけだった。会場内には出展社とその企業と関係のあるディストリビューターが多数おり、ブースで雑談をしている光景が目立った。関係者によると、来年のDrupa2016に向け各社が出展を出し惜しみしているとのことだった。

WANーIFRAの取り組みとして目を引いたのは、JANPSなどとは異なり、ユーザー側のプレゼンを実施していたことだ。出展ベンダーの導入事例を紹介をすることにより、現実味のあるプレゼン内容となっていた。

また、ドイツでは新しいニュースサイト、週刊新聞「ディー・ツァイト」が立ち上がり、若者が興味を示す媒体がつくられはじめた。ミレニアム世代に刺さるニュースコンテンツを模索し、今までにない新しい価値観での紙面制作が行われている。

未来のニュースビジネスを切り開く

1「音声ニュースビジネス」

音声(読み上げ)を利用してのニュース配信ビジネスはすでに存在していたが、デンマークの大学生がスタートアップした、「amazon echo」を利用しての配信サービスに関する報告は大変興味深かった。金銭面の支援は、2012年頃からCCIヨーロッパが行っている。

将来的にはニュースと合わせ、購買商品情報も消費者に提供していくことを想定しており、スマートフォンやタブレットなどの端末で画像を確認し、amazon echoに指令を出すだけで、情報や商品の提供を受けることができるというものだ。配送方法もドローンを利用するなど、消費者を取り巻く環境 も劇的に変化していくのではないだろうか。

また、ドイツでは新しいニュースサイト、週刊新聞「ディー・ツァイト」が立ち上がり、若者が興味を示す媒体がつくられはじめた。ミレニアム世代に刺さるニュースコンテンツを模索し、今までにない新しい価値観での紙面制作が行われている。

2「ウェアラブルコンピューターの進化」

Apple Watchに代表されるように、昨年はGoogle Glassなど、身に付けるデバイスが進化し始めている。既に、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポスト紙は、Apple Watchでのニュース配信を始めているとのことだ。キーワードとして、「子供」「女性」「健康」「エンターテインメント」「スポーツ」が多く検索されており、それらをカバーした新しい情報提供が不可欠だとの説明だった。

3「拡張現実(AR)ビジネス」

展示会場では拡張現実(AR)ビジネスを紹介しているブースがあった。新聞紙面や折り込みに掲載された不動産や旅行情報を専用デバイスを通して見ることにより、実際にその場に足を運んでいるかのように詳しく情報が得られるというものだ。

展示会場では拡張現実(AR)ビジネスを紹介しているブースがあった。新聞紙面や折り込みに掲載された不動産や旅行情報を専用デバイスを通して見ることにより、実際にその場に足を運んでいるかのように詳しく情報が得られるというものだ。

ノルウェー編

シブステッド・メディアグループ視察

シブステッド・メディアグループはノルウェーの首都オスロに本拠地を置く世界的なグループだ。同グループは主に、①新聞発行事業部門②オンラインのクラシファイド広告部門③WEB関連で将来有望な会社に投資する部門(growth)から構成されている。同グループはヨーロッパを中心に30カ国で事業展開しており、グループの従業員は6800人(ノルウェー以外の従業員は3800人)。 2014年グループ売り上げは149.75 億NOK(ノルウェークローネ)で、日本円に換算して2246億円にのぼる。

ノルウェーでのメディア事業

2014年のメディア事業の収入は前年比で2%減。営業総利益は9%。発行する新聞は定期購読が中心のアフテンポステンと、1部売りのヴェルデンス ・ガンク(VG)がメインとなる。

アフテンポステンの部数は21万4000部でノルウェー国内で最大の日刊紙だが、部数は年々減少傾向にあるという。WEBは従量制のペイウォールを採用し、毎週8記事までは無料で提供している。またVG紙は、10年前まで一部売りとしては一番多く読まれている新聞であったが、最近では16万4000部 と急速に部数を落としている。

シブステッド・メディアグループ「VG紙」

特徴

  1. ノルウェー国内で56%のシェアを占めているメディア。
  2. 紙面の宅配は行なっていないが、オンライン配信により6万7000ユーザーを獲得。
  3. 12年間で印刷は65%減少したが、利益率は安定している。1995年デジタル開始、2010年VG mobile開始、2014年VGTV開始。
  4. Breaking News(今起きているニュース)に強く、全ての社員がデジタルに関わっている。
  5. VGTV(ビデオコンテンツ)が伸びている。
  6. デジタルファーストが浸透し、コンテンツもデジタル中心であるが、紙面への提供も行っている。
  7. Aftonbladet(スウェーデン)とコンテンツ共有。
  8. システムはWEBベースの自社開発。

シブステッド・メディアグループ「アフテンポステン紙」

特徴

  1. ノルウェー最大の日刊紙で21万部発行。(日本のスケールなら500万部クラス)
  2. 媒体は他にも、日刊紙、ウィークリーマガジン、モバイル/タブレット/パソコン、子供向けウィークリー紙。
  3. 2012年頃からオンラインユーザーが増加。
  4. デジタルファースト、モバイルファーストが浸透。新聞デスク以外は全員デジタルベースで仕事をしており、デジタルベースで紙面作成をしている。
  5. ソーシャルメディア強化のための専任デスクが4人。デジタルコンテンツには約200人が関連しており、1日あたり150コンテンツを提供している。
  6. システムはCMSやInDesignをベースにツール類を自社開発。新しいツールをグループ全体に適応するため、グループ専任の開発者を抱えている。

視察したグループ会社は、日本に比べデジタルを意識した編集作業を行っていた。また、日本とは異なり紙面とデジタルのレイアウトが似ているため、デジタルベースで記事をつくり紙面落とし込むことが可能となっている。今後の新聞制作システムあり方について考えさせられる視察であった。

Schibsted社Trykk工場視察

印刷工場

  • 1998年に稼働
  • 床面積:約4万5000㎡
  • 1階:紙庫、輪転給紙部、梱包ライン、トラックヤード
    2階:輪転機、CTP室

印刷媒体

  • 全国紙3種類印刷。
  • 2009年は年間5万7000㌧の巻き取りを使用。現在の使用量は減少している。
  • 商業印刷も行なっており、部数は伸びている。
  • インサート作業は2008年をピークに減少。
  • 全てタブロイド印刷でステッチャー留め。
  • ノルウェーではステッチャー留めが多く北欧の各国で広がっている。

製版・プリプレス

  • CTP:Krause LS Jet300×4台
  • プレート:Agfa N94VCFフォトポリ、現像レスは574×394㎜、感度35μJ/㎠、 耐刷20万/imp、1250枚/パレット、合紙あり
  • 処理機、ベンダー: Krausebluefin
  • 刷版仕分け装置:CTPから出力されたものを、自動で仕分けする刷版仕分け装置。

印刷機器

  • 輪転機: Goss Colorliner 80S
  • 印刷速度:MAX8万部h
  • 22T+5F+27R…5媒体同時印刷可能
  • インサート作業は2008年をピークに減少。
  • 折り機:2:5:5のジョウフォルダーで最大4セクションが可能

紙庫

縦積みで4日分を収納。用紙メーカーはホルメン。用紙色は3種類。(白、ピンク、薄ピンク)給紙搬送はフォークリフト型搬送車を使用。

キャリア・インサータ

Ferag。先刷りした新聞、外部持込媒体をDiscpoolにドラム状に巻きつけ保管。

まとめとして

北欧の新聞社を視察した結果、日本と同様の状況下であることを感じた。

紙の部数の減少

デジタルもペイウォールモデルで構築しているがニュースには極力お金をかけたくない

デジタルは広告収入が少ない

減少している紙での収入が多い状況。

デジタルファーストでデジタルコンテンツの運用ベースで紙面製作。

デジタルを意識した編集作業で大画面でWebの状況を確認しながらの作業スタイル。

紙専任担当者がほとんどいない。取材からコンテンツ作成(記事、写真、ビデオ)までマルチに行う体制が整っていた。

新聞社のブランド力を中心としてニュースだけでなく、ライフスタイル,健康,求人,中古車販売,イベントの企画から制作まで読者密着型の取り組みを発信。

ビデオ(映画)製作などブランドイメージ作りも強化していた。

システムWEBベースのシンプルなもので変化に対応できる仕組みとなっている。

日本とは異なり、「新聞製作トータルシステムではなく、個々のシステムをツールとして使用していた。

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